精力剤 : http://www.biyakushop.net/ProClass.asp?id=1

April, 2013
-
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
20
21
22
23
24
25
26
27
29
30
-
-
-
-
PROFILE
MYALBUM
CATEGORY
RECENT
RECENT COMMENTS
RECENT TRACKBACK
ARCHIVES
LINK
SEARCH
PR




Apr 28, 2013
天使の羽が舞う夜
久しぶりに一緒にお風呂へ入った姉妹。
 
お姉ちゃんは胸が大きい……っと、話が逸れて肝心な事が話せずにいた。
 
今回のこの作戦、『姉妹の仲を深めよう作戦』と言う名のとおり、姉妹の親睦が目的なんだ……私たちって普段からあまり姉妹として仲がよろしくないからね。威哥十鞭王
 
そして、お次は一緒のベッドで寝ることになった。
 
「……こうしてお姉ちゃんと一緒に寝るのって何年ぶり?」
 
「なぜ……私が妹と一緒に寝なくちゃいけないの」
 
「うわっ、めっちゃ嫌そうな顔。私でも傷つくんだからね」
 
無理やりベッドでふたりで寝るのはちょいと狭い。
 
けど、こうして一緒に寝るのは子供の頃以来。
 
昔は……ううん、本当はずっとこんな風に仲のいい姉妹でいたかった。
 
今でこそ私達はこうして軽く言い合える仲だけど、昔はホントに仲がよくなかったから。
 
姉妹というよりも常に好敵手(ライバル)。
 
お互いにそれぞれ譲れないモノを抱えて、壁を作りあっていた。
 
「お姉ちゃん……電気、消してもいい?」
 
「私は電気を消したら、眠れないの。いつも付けっぱなしじゃない」
 
「あぁ、そうだった。よくこれで眠れるよねぇ。私には無理だ」
 
「どうせ、そのうち寝てるわよ。……はい、おやすみ」
 
姉は昔から電気を消した真っ暗な所では眠らない。
 
精神的なものだと思うけど、暗い場所だと眠れないんだって。
 
「おやすみじゃないよ。たまにはこうして姉妹同士、朝までゆっくりと語りあおう」
 
「私、そんな面倒なのに付き合っていられないわ」
 
「うちの姉は妹に対して冷酷です。卑劣な魔女です、性格悪いし、淫乱です」
 
「……夢月、変な事言うと潰すわよ?」
 
笑顔で私の肩にもの凄い力で掴むお姉ちゃん。
 
い、痛い、外れる、肩が外れる〜っ。
 
「ふにゃっ!?ごめんなさい、最後の間違えた。“腹黒”でした、間違えたのは許して」
 
「それはそれでムカつくわね。やっぱり、潰しておきましょうか」
 
「うぅ、何なのさ。蒼空お兄ちゃんの前ではお淑やかな妹を演じてるくせに。ホントは強気ッ娘じゃない。裏表あるし、嫌な感じだぁ〜」
 
私の言葉にお姉ちゃんはムスッとして言う。
 
「ふんっ。別にお兄様の前なら大人しくなれるわ。これが素じゃないもの。ただ……昔から夢月の前だとこうなっちゃうだけよ」
 
そういうのを裏表があるというの、と声を大にして言いたいけど我慢しておく。
 
私もそうだけど、素直になれないっていうか、姉妹同士だと反発しあうんだよね。
 
「私は……お姉ちゃんのことが好きなのになぁ」
 
同じ布団の中にくるまりながら、私は彼女の手に触れた。
 
私は人に触れるのが好き。
 
こうして他人の温もりを感じると心がホッと癒されるっていうか、とても安心できる。
 
「私は夢月のこと、それほど好きじゃない」
 
「うわぉ、爆弾発言キター。言うじゃん、やるじゃん。今の一言は妹のガラスの心にぐさっと突き刺さりました。傷ついて動けないわ、ぐすんっ」
 
「……今さらでしょう?何年、貴方と姉妹やってきてるのよ。私は夢月が好きじゃない」
 
「ふぇーん。そんなに断言するように何度も言わないでよぅ」
 
双子……意識していなくても、繋がりのようなモノを感じあう特別な存在。
 
普通の双子のイメージっていつでも一緒と言うか、依存度が高いって言うか、こうなんていうのかな……特別な存在ゆえに仲がいいのが常じゃない?
 
それなのに、うちは双子の姉妹なのにシンクロ率が低すぎる。
 
アレだよ、シンクロ率が低いとエヴァ(以下自主規制)には乗れないんだよ。
 
「お姉ちゃんと私ってホントに似てないよねぇ」
 
「それはある意味、幸せと取るべきかしら?」
 
「ひどっ!でも……私はそれが寂しいな。双子らしくないんだもんっ」
 
もっと心の奥底で繋がりあうものが欲しい。
 
「……確かに私達は似ていない。双子なのに、外見も、性格も、好みや特技さえも違うわ。私の方が頭はいいし、胸も大きいし、スタイルもよければ美人系な顔だもの」
 
「とりあえず、喧嘩を売られているのは理解した。ちくしょー、お姉ちゃんに勝てるものは私にはないの?何か、私に勝てる武器はないの?」
 
ベッドの中で暴れると「大人しくしなさい」とたしなめられる。一砲到天亮 
 
「うぅ……ホント、お姉ちゃんは私にはないものばかり。私はずっとお姉ちゃんが羨ましかった。私と“同じ”はずなのに、どうしてこんなに違うのかって」
 
「それは私の台詞よ。夢月にはあるじゃない、私にはどんなに欲しくても、望んでも手に入らなかったものを貴方は持っている。それは音楽の才能よ」
 
天井を見上げて消え入りそうなほど小さな声で彼女は言った。
 
その視線の先には何を見つめているんだろう。
 
「……そうだね」
 
私にはそれしか言えなかった。
 
今だから思えるし、言える事でもあるけれど。
 
音楽の才能だけは私の宝物だ、これがなければ私は失敗作のようなものでしかない。
 
ずっと姉に対して劣等感を抱くだけの存在だったに違いないから。
 
私は自分で言うのもなんだけど、音楽に関しては天才的なモノを持っている自負がある。
 
お姉ちゃんは同じように音楽を始めて、何一つ成し遂げられなかった。
 
心に抱えているのも知ってるし、お互いに“暗黙の了解”的にこれまで触れてくる事はなかった。
 
「ずっと貴方が羨ましいと思っていた。両親からは期待されているし、愛されている。私なんて頭が良くて、スタイルが良くて、他の事がどれほど夢月より優れていても……お父さんやお母さんに褒められた事なんて1度もないもの」
 
「……そんな事ないって。パパたちはお姉ちゃんを認めている。逆を言えば私は音楽では褒められるけど、成績はいつもギリギリだから『頼むから最低限、学校だけは出てくれ』と涙目で言われるくらいだよ?」
 
親に『世間で言うバカキャラにだけはならないで』とお願いされる娘ってとても寂しい。
 
そう言う意味では学年トップの頭脳を持つお姉ちゃんはすごいって尊敬している。
 
「どうして、私たちってこんなに極端なのかしら。私と夢月、ふたりがひとつの存在ならきっと、とても優秀な存在だったのに……」
 
「生まれてきた時にふたつに分かれちゃったんだねぇ。だけど、私は……それでよかったんだと思うよ。きっと何でも出来る子だったら、それはそれでつまらないと思うから。人間は少し何かに欠けていないとダメだと思うの」
 
私の言葉をお姉ちゃんは不思議そうに、「アンタ、何をいってるの?」と言う感じで見つめてくる。
 
「完璧な人間を羨むのは当然でしょう?」
 
「うーん。私が言いたいのは違うの。人間は欠けているところがあるから、欠けていない場所が魅力になるわけだもん。あの子は綺麗だ、あの子は運動神経がいい……人の魅力って、極端に言えばパラメーターのばらつきでしょう?」
 
「パラメーター?よく分からないけど、つまり……何かに秀でいるという事を目立たせるためには均一ではいけないというの?」
 
「そんな感じ。結局、人間って長所と短所があるからいいんだよ。良すぎてもダメ、悪すぎてもダメ、偏りも大事なんだと思う」
 
それに完璧な人間は魅力がありすぎてつまらない。
 
人間、ひとつやふたつくらいの魅力じゃないと面白みがないでしょ?
 
「つまり、私が言いたいのは……」
 
「夢月には音楽という魅力があるように、私にもそれに劣らない魅力がある。そういいたいのね……。他人を羨むより、まず自分のいい所を見つけなさい、か」
 
何かを思い出すように告げたお姉ちゃん。三体牛鞭
 
「それは誰の言葉?」
 
「蒼空お兄様の言葉よ。以前、私が悩んでいる時に言ってくれたの。『人には得意、不得意があって当たり前だ。他人の事を羨むよりも、今の自分に何があるのを知る方が大事だよ』って……分かってはいても、そんな風に考えるのは難しい事よ」
 
私はポジティブ思考なのであまり物事は深く考えない主義だ。
 
でも、私でもお姉ちゃんの抱える“コンプレックス”とかは分かる。
 
彼女は彼女なりに悩みがあって、私にも私なりの悩みがある。
 
「あははっ、何か今すごく親近感が湧いてきた。私、ずっとお姉ちゃんは他の事ができるからいいって思いこんでいたの。音楽だけは私のモノだって。違うんだよね、そういうのじゃないんだ」
 
私は握り締めていた手に力を込めると、お姉ちゃんはその手を握り返してくれる。
 
そうだ、私達は……お互いを嫌いになりあう必要なんてないのに。
 
「姉妹だから余計にお互いを比べてしまう。他人には姉妹として比べられるのが嫌なくせに、自分達の間でもこんなにもお互いを常に比べあっていたんだ。だから、仲良くなれない。やめようよ、そんな風にお互いを“過剰”に意識しあうのは……」
 
「どちらにもそれぞれの魅力がある。比べてしまうから辛くなる。片方にしかない、片方だけにある。そんな風に私達は思い込んでいたのね……」
 
人間だから、違って当然なんだ。
 
才能も持って生まれたモノも、同じではない、ちゃんとした個々がある。
 
それが、双子の姉妹であったとしても……他の人と何も違う事はない。
 
「お兄ちゃんって、決して私たちを見比べたり、差別や区別したりする事がなかった。……分かっていたんだよ、ずいぶん前から私達のすれ違いに」
 
「そして、私たちに乗り越えて欲しいと願っていたの。お兄様はずっと私たちを見守っていたの。……本当になんて優しい人なんだろう」
 
男嫌いだったお姉ちゃんを魅了したお兄ちゃん。
 
その優しさ、本物だね……だからこそ、私も好きなわけで……。
 
「ふわぁ……」
 
私が欠伸をすると、お姉ちゃんはそっと微笑んだ。
 
「もう寝ましょうか……。ねぇ、夢月。私はこれからも貴方の姉でいいのかしら」
 
「何を今さら。私のお姉ちゃんはずっと、一生、星歌お姉ちゃんだよ」
 
姉妹の確執はこの瞬間に完全に消えた。
 
長い、本当に長い時をすれ違い続けた姉妹。
 
今、この瞬間にそのすべてを……解放する。
 
「……でも、お兄ちゃんは渡さないけどね?」
 
「そう、私も譲る気はないわよ。お兄様は私のものだもの」
 
「えーっ。譲るっていう台詞は聞き捨てならないなぁ」
 
そんな風にいつもと違う明るい感じでお互いの気持ちを言い合える。
 
ずっと憧れていた、本音で語れる関係……姉妹としての本当のあり方に。
 
私にとっておねえちゃんは世界で1番近い存在。
 
これからもそれは変わらないでい続ける。
 
その夜、私達は本当の意味で仲良く一緒に眠りについた。
 
私は幼い頃の夢を見ていたの。
 
『……わたし達は似てない。双子は似ていて当たり前なのに。夢月はどうして私に似ていないの?同じじゃないの?』
 
『似ていないとダメなのかなぁ。私は……似ていなくてもいいと思うよ』
 
私とお姉ちゃんは本当に幼い時から変わっていない。
 
やっと……心も成長したんだね、私たち。
 
本当の意味で姉妹を受け入れた事はきっと私たちにとって大きな成長だよ。
 
……でも、ひとつだけ私はその瞬間に忘れていたの。
 
「……うぐっ、た、助けて。中身が、中身が出るぅ……ぴくぴく(痙攣)」
 
ハッと気づいたら、姉の強い力で抱きしめられていて目が覚めた。
 
ぎゅーっと私をその豊満な胸で圧迫する姉、その胸が今は憎い。
 
「へ、ヘルプミー。お兄ちゃん、助けて……ガクッ」
 
手足をばたつかせて、うわ言のように私は助けを求め続けていた。
 
そう、うちのお姉ちゃんは寝起きもそうだけど、寝相がもの凄く悪いのだ。
 
結局、抱き枕状態でうなされる私は朝を迎えるまで苦しむのでした。
 
せっかく仲良くなれても根本的なところは変わらないのかも。RUSH情愛芳香劑 ECSTASY POP
 
……ふみゅーん。
Apr 19, 2013
告白、3年越しの想い
黒羽さんと竜也先輩の交際は彼のせいで破局した。
 
隠蔽されていた過去に真実はあるの……?MMC Golden Viagra
 
私達の前に竜也先輩は相変わらず不真面目な顔をしてやってきた。
 
「碧流ちゃん、俺の事が知りたいなら俺に聞けばいいのに。久しぶりだな、黒羽。こうして会うのは中学の卒業式以来か?やけに綺麗になって、綾部が羨ましい」
 
「……どうして、先輩がここにいるのよ!?」
 
私の家に堂々と上がりこんできていることにムッとすると後ろの兄さんが答える。
 
「僕が呼んだんだよ。こいつを交えて、ふたりに話さなくちゃいけないことがある」
 
「時雨兄さんが?」
 
「せっかくの日曜日、俺としては碧流ちゃんとのデートを希望してるんだけど。まぁ、そういうわけだ。何かよく状況は理解できてないんだが、3年前の真実を話せって言われた。いい機会だからな、黒羽に話してみようかなって」
 
時雨兄さんがわざわざ先輩をここに呼ぶなんて。
 
それはきっと特別な意味があるという事だと思う。
 
「そんな簡単に言える事なの?先輩は……いや、もう、いいや。それなら説明してよ。竜也先輩はなぜ、黒羽さんに何もしなかったの?」
 
「……別れを切り出した時もそうだった。『そうか、分かったよ。別れよう』、貴方はそれだけの言葉でしか答えてはくれなかった」
 
黒羽さんも竜也先輩の方をジッと凝視する。
 
この3年間、彼女を悩ませていたことがある。
 
それが適当な理由だったら私も許さない。
 
先輩は私の横で過去を振り返るように話し出す。
 
「大した理由かどうかは自身で判断してくれ。少なくとも、3年前の俺は正しいと思って行動したことだ……」
 
「当然でしょう。どちらにしても過去は取り戻せないもの」
 
竜也先輩が語る過去、それはもうひとつの側面だった。
 
そして、私は知る事になる。
 
この桜峰竜也と言う男の子の不器用な人の愛し方を――。
 
「理由は2つある。ひとつは黒羽が俺の事を愛していないと知ったから。俺はこうみえても恋愛しないと付き合えない。誰でもいいって理由は絶対にない。それは前提に考えておいてくれ。あの当時、俺は黒羽を本当に愛していた」
 
「どうも竜也君の口から聞くとその言葉が軽く聞こえるの」
 
「そりゃ、残念。これでも、心のない言葉じゃないんだけどね」
 
飄々と言ってみせるのが彼らしい。
 
竜也先輩がそんな風に軟派な素振りを見せるから誰も本気にしないんだって。
 
「と、信頼はないにせよ、俺はそれなりに黒羽を気に入っていた。だが、黒羽からは俺を好きだっていう気持ちを感じられなかった」
 
「そんなっ……。私はあの時、本当に貴方のことが好きだったわ」
 
「それは今だからこそ、そう思ってるだけだ。あの頃を思い出せ、本当にお前は俺を愛していたのか?あの“桜峰竜也”と付き合ってる、それだけじゃなかったか?」
 
「そ、それは……。少しはそういう気持ちもあったわ。けれど、だからと言ってあんな風に扱われる理由にはなってない」
 
シュンッとする黒羽さん、何となく私も彼女の気持ちは分かる気がした。
 
学内の人気者と付き合う事ができても、想いがなければ恋か憧れか分からなくなる。
 
竜也先輩は普段のふざけた姿からは想像できない真面目な様子を見せていた。
 
「あの頃の俺は誰かに愛されるような人間ではなかった。心の切り替えは早かったし、恋しているという高揚感でさえ、新鮮味を失いつつあったのも事実だ」
 
自嘲するように彼は言う。
 
時雨兄さんはただ黙って黒羽さんを見つめているだけ。新一粒神
 
「もうひとつの理由が、黒羽と別れるきっかけ。友人だった“男”が黒羽を好きだって知ったんだよ。まだ戻れると思った、黒羽を好きになって間もないその時なら、深く愛する前なら……俺は身を引ける、と」
 
「ちょっと待って。竜也君、その相手ってまさか……!?」
 
私達の視線は竜也先輩の隣にいる時雨兄さんへと向けられた。
 
兄さんは淡々とした言葉で過去の懺悔を言い放つ。
 
「……そうだ、黒羽。僕は友達でいたころからずっと好きだった。告白をしようと思ったが、それよりも前に黒羽は桜峰を好きになっていた。だから、言えなかった」
 
竜也先輩の話だと、瀬能先輩からその事実を聞かされて、彼は兄さんを呼び出した。
 
『綾部、黒羽を本当に愛しているのか?』
 
『……だとしたら。気にするな、僕はお前たちの関係を応援する。ただし、あの子を泣かせるような事だけは絶対にしないでくれ』
 
自分の心に嘘をついて、時雨兄さんはふたりを応援しようとしていた。
 
だけど、兄さんの強い想いを知った竜也先輩は彼女と別れる道を選んだ。
 
「それじゃ、竜也君は時雨と私を結びつかせるために……?」
 
「俺よりも強く想う人間が黒羽の傍にいた。それなら、俺は必要がない存在。だから、お前と別れるためにわざと何もしないでいたんだ。方法は違った、もっとはっきりといえる勇気があればお前を傷つけずにすんだのに。そこは反省しているよ」
 
黒羽さんはどうしていいのか分からないと言った表情を浮かべていた。
 
当然、彼女はその真実を受け入れる事なんてできない。
 
「だとしたら、時雨が私を慰めてくれたのは初めからそう言う話がついていたの?」
 
「いや、僕も本当にふたりが別れるなんて思っていなかった。いきなり、電話で『あとは任せる』って言われて、桜峰が黒羽と別れたのを知ったのはそのあとだ」
 
「竜也先輩、まだ何か隠してるでしょ?」
 
ふたりの話を聞いていて、分からない事がひとつだけある。
 
「竜也先輩が黒羽さんと別れたのは黒羽さんへの愛情、それとも兄さんへの同情?」
 
「だから言っただろう。俺はそれなりに黒羽を好きだった。だが、俺はお前らの知ってる通り、女好きで軽薄そうな印象を持つ男だからな。誰も信じてくれないだろうが、俺だって悩んだ結果なのさ……」
 
竜也先輩は黒羽さんとの関係を終わらせたくはなかったんだろう。
 
友人の好きな相手、自分よりも相手を想うからこそ身を引いた。
 
自分よりも兄さんと一緒の方が黒羽さんが幸せになれるって考えたんだ。
 
時雨兄さんも黒羽さんも黙り込んでしまっている。
 
「違うよ、竜也先輩。それは間違ってる。確かに先輩の行動はふたりを思っての行動だと思う。その後、ふたりが無事に付き合うことになって安心したんでしょう?けれど、それは結局、自分の気持ちから逃げたんじゃない?」極品狼一号
 
「誰も自分の行動が正しかったなんて言ってない。俺の気持ちが本気になる前だったこともある、ホントに自分が好きになっていたら黒羽を手放すことなんてしない。どちらにしても、俺が黒羽を傷つけたことには変わりないんだ」
 
3年前にこの3人に起きた出来事は推測するしか出来ないけれど、きっとそれは彼らにとっては大きな出来事だったに違いない。
 
その傷跡はそれぞれの胸に残り続けている。
 
皆が黙り込んでしまう、その沈黙はお互いの過去を整理する時間。
 
あの頃、違えた道にけじめをつけるために。
 
黒羽さんは落ち着いたみたいで、時雨兄さんの手を握り締める。
 
「今まで騙すような事をしていて悪かった。僕はキミにこの真実を隠し続けていた。それでも、信じて欲しい。僕がキミを好きだという事を。その想いは変わらない」
 
「時雨がいてくれたおかげで、私は立ち直れたし、好きになって本当によかった。今だから言えるのかもしれないけれど、私は時雨の恋人になるために竜也君と別れた事を後悔していない。竜也君も……今まで一方的に責めていてごめんなさい」
 
「あぁ。やっぱり、黒羽と綾部はお似合いだと思うぞ。俺よりもな」
 
「ありがとう。竜也君も幸せになって欲しい。時雨も傍にいてくれてありがとう」
 
黒羽さんの浮かべた微笑みはとても綺麗で、美しく見えた。
 
3年の月日を経て、本当の意味で二人は結ばれた。
 
時雨兄さんが彼女を愛した気持ちが黒羽さんにちゃんと通じていたんだ。
 
どんな辛い過去や真実でも、受け入れられるだけの時間が経って成長していた。
 
幸せそうに笑いあう二人を見ていると、私もそんな恋がしたいって思ったんだ。
 
 
 
結局、3年前の真実は時雨兄さんと黒羽さんを本当の意味で結びつけて、竜也先輩もその過去から解放されていた。
 
……私といえば、興味本位で踏み込んじゃいけない地雷を踏んだ事にちょっとショックを受けていたの。
 
「はぅ……何か思わぬ状況になっちゃったなぁ」
 
「結果オーライだからいいじゃん。黒羽も綾部も乗り越えるものを乗り越えたって事で。おっ、この下着可愛いねぇ。碧流ちゃんはこういうのをつけてるわけだ。うーん、可愛いのが似合うなぁ」1粒神
 
「ちょっと人のクローゼットを勝手に開けないでよ。竜也先輩の変態っ!」
 
あの後、時雨兄さんと黒羽さんが話をしたいって言ってリビングに残っていたので、仕方なくこの先輩を私の部屋へと連れてきた。
 
女の子の部屋に来てさっそく、クローゼットを開けようとするなんて。
 
「油断も隙もない。さっきまでの真面目さはどこに?」
 
「……黒羽の事は俺も心に刺さったままのトゲのようなものだった。過去のけじめもしておきたかったし、いい機会だと思ったんだ」
 
でも、私なりに先輩の事は見直していたの。
 
だって、形はどうであれ、相手の幸せを思うために身を引いたわけだから。
 
そういう事をできる男の人だって、思ってなかった。
 
案外、恋愛に関しては真面目な人なんだろうな。
 
「……ただひとつ、俺はあの雰囲気で言えなかったけど。実は黒羽と別れたときって、どうせ俺はモテるから他の女の子と付き合えばいいやって気持ちも心の中にあったんだよねぇ。いや、本当に数パーセント程度だけど」
 
「最低っ!!やっぱり、先輩は最低な変態じゃないっ。少しでもいいなって思った私の気持ちは?もうっ、ホントに嫌な人だ」
 
呆れた口調でいう私だけど、何となく分かっていた。
 
それが本音ではなく照れ隠しでしかない事を。
 
先輩がふたりの事も自分の事もいろいろと悩んで出した結論なんだ。
 
奈津美先輩じゃないけれど、彼の言葉だけじゃなくて存在を見ていれば分かる。
 
「……それでも、傷ついていたんだよね?」
 
「まぁ、大なり小なり恋愛は人を成長させる物なのさ」
 
「先輩にだけは言われたくないなぁ。全然、成長していない」
 
「うっ……。ははは、それは遠い宇宙の果てに置いといて。明日の祝日に遊びに行かないか?今日はデートの誘いで来てたんだし。どう?」
 
過去を知り、彼の人となりを理解し始めていた私は軽く笑いながら、
 
「……仕方ないなぁ。しょうがないから、付き合ってあげる」
 
竜也先輩の事を少しだけ好きだって思える自分に気づいたの。
 
恋は意識した時から始まっている、これが恋なんだって……。 帝王家宝
Apr 01, 2013
恋人にはなれない
“不変を望んで何が悪い?”。
 
何一つ、変わりたくなんてなかった。
 
今がいいと思うから、変わらない事を望むのは罪か。女欲霊
 
変化なんていらない、ありのままの“現在”を望みたい。
 
過去を思い出す今になって思う。
 
あの頃の俺は絶望を味わいながらも、幸せでもあった。
 
紫苑に出会えたという奇跡。
 
関係は恋人でなくても、傍にいるという意味が大きかった。
 
お互いにとってかけがえのない必要な存在だった。
 
紫苑、今だから言える事があるんだ。
 
俺はあの時からお前の事が好きだった……ひとりの女として愛していた。
 
 
 
季節は流れ、俺は高校3年に進学して新学期が始まった。
 
まだ5月の中旬だというのに気温では初夏程度に感じる。
 
「……さすがにこの天気は暑いな」
 
俺は屋上の日陰に座りながらぼやく。
 
つまらない授業をサボっていた俺も今では普通に出るようになっていた。
 
不良扱いは相変わらずで、クラスで浮いた存在だがかまわない。
 
右腕も日常生活をおくるだけなら何とかなる程度に回復していた。
 
変わり始めた世界って奴は意外にも俺には住みよい世界だった。
 
俺の世界にはいつしか紫苑が入り込んでいる。
 
彼女と関係を持つようになってから半年が過ぎた。
 
今でもお互いにそういう気分になったら身体を重ねあう関係だ。
 
……そこに愛があるのかは未だに分からない。
 
変わらない関係というべきなのか。
 
俺達は恋人として接する事はなく、流されるように関係を続けている。
 
その日の紫苑は朝からどこか体調が悪いように見えた。
 
「……紫苑、大丈夫か?顔色が悪いぞ」
 
「別に海斗に心配される事じゃないわ。私は大丈夫よ」
 
「それならいいけど……無理はするなよ」
 
紫苑の瞳はここじゃない、どこか遠くを見つめているように見えたんだ。
 
そう、ずっと遠くを彼女は見ていた。
 
「……海斗。飛べなくなった蝶々はどう生きていけばいいのかしら」
 
「また、それか。もっと具体性を持って話してくれ。何か悩みでも抱えているのか?」
 
「……これは悩みじゃない。その答えは既に出ている。ただ私はその答えに納得できないだけ。私という人間は他人が思うよりも我が侭なのよ」
 
紫苑がこういう言い方をする時、大概、俺は何も言い返してやれない。
 
俺と同じように紫苑にも人に言えない悩みっていうのがある。
 
悩みがあると分かりながらも彼女はそれが何かは喋ろうとしない。
 
どうしても、他人に踏み入らせようとしない紫苑の心。
 
知りたいと思う事はあっても、俺はそれをしなかった。
 
彼女もそれを望んでいたから、できなかった。
 
紫苑の心はガラス細工のように触れたら壊れそうな気がしたから。
 
「我が侭は悪いのか?いいじゃないか、人間っていうのは我が侭なものだろう」
 
「……皆が我が侭に生きたらこの世界はどうなると思う?」
 
「我が侭になれない世界に生きても意味はない。俺はそう思うけどな」
 
紫苑という女は一見、ポジティブに見えるが、本質はネガティブなのかもしれない。
 
いや、無理に捻じ曲げる何らかの障害があることも否定できないが。
 
彼女が時折、哲学的に話す言葉はいつも“希望”を含んでいないのだ。
 
「私は未来に希望がないのよ。ううん、言葉が足りてないわね。正確に言えば、私が望む未来を私は歩む事ができない。私には自由がないの」
 
「……どういう意味だ?」
 
「既に答えは出ているの。私には決められた道がある。その道を嫌でも歩かないと生きていけない。海斗も今なら分かるでしょう。それまで当然のようにあった日常は些細な事でも崩れ去る。人間は常に同じではいられない、変わっていく……私は変わる事が怖いわ」
 
こうして不条理な世界に突き落とされて分かった事がある。
 
人間、生き方は人それぞれ、考え方を変えただけで変わっていく。
 
……それまで歩んできた道とは少しずれただけでも怖いんだ。
 
変わる事を人間は最も怖れている。
 
「人間の意識を変えるのは難しいもの。けれど、それは否応もなく襲い掛かる場合があるわ。海斗、貴方を変えたようにね」花痴
 
「今日は一段と何を言いたいのかが分からない……」
 
紫苑と会話しているとそのテーマというか、本質を見抜かねばならない。
 
彼女は何をいいたいのか。
 
それを見つけ出すのが紫苑との正しい付き合い方だ。
 
照りつける太陽の日差し、澄み切った青空に彼女は言葉を放つ。
 
「……海斗、私達の関係って何なの?」
 
「関係?それは……」
 
改めて問われると言葉に詰まる。
 
なぜなら、俺と紫苑の関係を示すモノは何もないから。
 
お互いに友情を抱いていないから友達ではない。
 
愛情を確認しあっていないから恋人でもない。
 
つまり、俺と紫苑はクラスメイト程度の他人でしかないのだ。
 
「私達、今の関係が1番いいのかな。海斗はどう思う……?」
 
それは彼女にとってどんな想いを込めて言った言葉だろうか。
 
「……俺には今の関係が何なのか分からない。だけど、俺はお前の傍にいると落ち着く、それだけだ」
 
「……ぅっ……」
 
紫苑はなぜか唇をかみ締めるような表情を見せた。
 
それは悲しそうにも、辛そうにも見える。
 
彼女は何かに耐えるように、小声で言葉を紡いだ。
 
「そうよね、所詮、私達は他人だもの。私達は……恋人なんて甘い関係にはなれない。そんな事のために今を過ごしてるわけじゃない。セックスするのも、キスをするのも……ただ、したいからしているだけ。そこに特別な感情なんてないわ」
 
紫苑の淡々とした言葉はやけに鋭く俺の心に突き刺さる。
 
それは記憶に付箋するように、その後の残り続ける言葉。
 
俺達は恋人にはなれない……互いの身体を求める事はあっても、心までは求めない。
 
俺は紫苑が望んでいる言葉が分からず、その言葉を言えなかった。
 
もしも、この時、俺が別の言葉を呟いていたら運命は変わったのだろうか。
 
紫苑は立ち上がると屋上のフェンスを握る。
 
「……ねぇ、海斗。人はどうして空を飛べないのか考えた事はある?」
 
「羽を持たないから飛べない、そんなつまらん事を尋ねたわけじゃないだろ」
 
「ええ。人間は地上で生きる生き物だから、飛ぶ必要なんてない。だから、羽をもたないの。初めから飛べないものに翼は必要ない。でもね、最初は自由に空を羽ばたけた蝶々も綺麗な羽をもがれてしまえば飛べない。そう、飛べないの……」
 
紫苑が俺を真っ直ぐな強い視線で捉えていた。
 
思わず言葉を飲み込む俺に彼女ははっきりと告げる。
 
「……飛べなくなったモノと最初から飛べないモノ。両者はどちらも空を自由に飛べないけれど、生きている意味と言う点では異なるわ」
 
「紫苑……?」
 
「私も最初は自由に空を飛べた蝶々だった。だけど、いつのまにかその羽は飛べなくなってしまった。……私はこれからどう生きればいいの?」
 
悲痛な少女の叫び、今なら理解できる……。
 
これは紫苑の助けて欲しいという言葉だった。
 
「……きゃっ!?」
 
ふっと、突然、彼女は身体のバランスを崩す。
 
立ちくらみをするように、倒れこもうとする紫苑を俺は咄嗟に抱きかかえた。
 
「……お、おいっ。紫苑、大丈夫か!」
 
「うぅ……気持ち悪い」
 
顔色が悪いのは気づいていたが、本当にしんどそうな顔をしている。
 
症状から判断すると貧血だろうか?
 
「体調が悪いなら、先にそう言えよ。保健室に連れていってやる。立てるか?」
 
「ごめん、足に力が入らないの」
 
「……しょうがないな、それなら背負っていくか」
 
「それよりも……抱っこがいいな」
 
彼女が消え入るような声で告げたのは呆れるような我が侭だった。
 
この状況でよく言える、どうやら見た目以上に大丈夫そうだ。
 
「……ったく、後悔しても知らんぞ?」
 
「あははっ、恥ずかしいのは海斗の方じゃないの」
 
とはいえ、放っておくわけにもいかずに仕方なくそれに従う事にする。紅蜘蛛(媚薬催情粉)
 
優先すべきは紫苑の身体、文句も言っていられない。
 
「うるさい。黙って俺に掴まっていろ……お姫様」
 
俺はしがみついてくる彼女を抱きかかえる事になった。
 
いわゆる、お姫様だっこって奴だな。
 
人生でこんな経験をするとは思っていなかった。
 
「……うーん、想像以上にいい感じ。海斗はどう?」
 
「さぁな……」
 
俺は気恥ずかしさを誤魔化して、短くそう答えた。
 
本当は女性を抱きかかえるという事に緊張したが、紫苑の手前、黙っておく。
 
俺は彼女を抱きかかえたまま、屋上から出る事にした。
 
階段ですれ違う生徒たちが俺達を見て驚く顔を見せる。
 
……唯一の例外は抱きかかえられた本人、紫苑だろう。
 
笑っていたんだ、とても楽しそうに。
 
だから、俺は何も言えなくなった。
 
女の子の笑顔は時々、嫌になるくらいにずるい。
 
俺が保険室にたどり着いた頃には噂が流れる程度の人数の生徒と遭遇してしまった。
 
これで明日には、俺と紫苑の妙な噂を聞かされる事になるんだろう。
 
俺は保険医に事情を説明すると、彼女をベッドに寝かせるように言われた。
 
「……ありがとう、海斗」
 
お礼を言う紫苑の頭を俺はそっと撫でてやる。
 
例え、恋人ではなくても、俺達は自分たちらしい関係でいられる……今はそれでいい。
 
紫苑の症状はやはり貧血だった、数日前から睡眠をほとんど取れていないらしい。
 
やはり、抱えてる問題のせいだろうか。
 
俺は紫苑の力にはなれないのか、それだけが気がかりだった。
 
 
 
……放課後になって、俺は授業を終えてすぐに保険室に立ち寄った。
 
午後の時間をここで過ごした紫苑に会うためだ。
 
帰りは家の人に連絡をしたらしく、校門まで彼女を見送る事になった。
 
「……はぁ、ホントに今日は迷惑をかけたわね。ありがとう」
 
「そんなのはいちいち気にする事じゃない」
 
「海斗……私は……」
 
きゅっと俺の服を掴んだ紫苑、彼女が何かを言おうと唇を動かしたその時、
 
「……紫苑ちゃんッ!?」
 
突如、女の人の声が校門に響く。
 
こちらに近づいてきた綺麗な女の人、もしかして、紫苑の家族か?
 
「美咲姉さん?どうして……仕事はどうしたの?」
 
「そんな事より、倒れたって聞いたから来たのよ。大丈夫?すぐに病院に行く?」
 
「もうっ、心配しすぎよ。私は大丈夫だから落ち着いて」
 
お姉さんらしき人は紫苑を本当に心配しているように見えた。
 
両親はいないと聞いてるから、実際に仲がいいのだろう。
 
「あ、海斗。紹介するね、私の姉さんよ。美咲姉さん、彼が私を助けてくれたのよ」
 
「紫苑の姉の美咲です。どうも、紫苑がお世話になったみたいでありがとうございます」
 
「クラスメイトとして、当然のことをしただけですから」
 
何ていうかこういうのは照れる……。
 
挨拶を終えたあと、彼女は美咲さんの車に乗る。
 
「海斗、また明日。会いましょう」
 
「今日はゆっくり休むんだぞ。いいな?」
 
「そうね。……でも、今日みたいに優しくしてくれるのは嬉しかったわ。海斗が私に優しく接してくれるから、私はまだここにいられそう。私も海斗と一緒だから……」
 
意味深めいた言葉を口にして、彼女はそのまま車の窓を閉めた。
 
走り去っていく車を見送りながら俺は思う。
 
「そういや……人に優しくしたのはいつ以来だったかな」
 
そういう感情は封じ込めたと思っていたのに。
 
いつのまにか紫苑の前では昔の自分に戻れていた。
 
「変わる事は確かに怖いさ。だけど、その恐怖を乗り越えた先に希望はあるはずだ」美人豹
 
俺はまだ知らない、望んだ世界に希望が常にあるとは限らない事を。