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私はイツキという存在に依存していたんだと思う。 本物のイツキではなく私が創り出した幻想のイツキに。 冴原君が私の傍から居なくなって数日。人初油 時折、学校でユミといる所を見るだけで何だか複雑な気分になる。 彼を見かければ必ずと言っていいほど目で姿を追う。 私は彼に恋してなかったのに。 なのに、今さらながら彼に興味を抱いている自分がいた。 冴原君のことを改めて客観的に見て気づいた事がある。 それは人に好かれる魅力的な人柄を持っているという事だった。 付き合っている時にも感じていたけれど、実際に離れてみて強く感じた。 付き合う前はそれ以前に彼を男の子としてすら見てなかったから。 彼の事を想う度に、私は本当は彼に対してどういう気持ちを抱いていたかを考える。 冴原玲人という男の子。 幻想のイツキではなく、本当のイツキである冴原君は少しだけ頼りない所はあるけれど、カッコイイし、誰に隔てる事のない優しさを持っていた。 それこそが過去に私が恋をしていたイツキそのものだった。 幻想の崩れた今、私の中には後悔しか残っていない。 彼は本質的なものは何も変わっていない。 それなのに、私は私が望んだ姿を冴原君に押し付けてしまった。 その結果が恋人の終わりを導いてしまう。 『もうイツキは“貴方の心”にしかいないんだから』 その通り、私の愛したイツキはどこにもいない。 ……いつまで私は過去に縛られているの? それは夏休みを迎える前の日の出来事。 期末テストを終えて、消化的な授業を行う毎日。 私は3時間目の休憩時間に喉が渇いたのでジュースを買おうと購買部にいた。 自動販売機には新しいジュースが入荷していたので迷わずそれを買ってみる。 初めて飲むピーチ味の炭酸飲料は美味しかったけれど、半分ぐらいで限界だった。 やっぱり炭酸は飲みなれていないと結構キツイ。 残った分をどうしようか悩んでいると、ふと視界の先に冴原君が見えた。 友達と一緒に話をしながら私の方に気づくと手を振ってくる。 「あ、那須先輩。こんにちは」 「うん……。体操服って事は体育だったの?」 「いいえ、これからです。その前に水分補給でもしておこうかなって。今日はこんなに暑い日なのに持久走させられるんですよ。本当ならプールなんですけどね」 残念ながら、今週はプールが調整のために使えない。 私達は体育館でバレーだったけれど、男の子は持久走か、大変だなぁ。 「それなら、これ飲む?私の飲みかけだけど」 「炭酸ですか?いただきます」 缶を渡してから、ありきたりながら間接キスだって気づいて慌てふためく私。 でも、私はジュースを飲む彼の横顔を眺めるだけでほんわかとした何だかこそばゆい感じの気持ちを抱いた。 これって何だろう? 「ねぇ、先輩。これって先輩と間接キスだと思いません?」 「えぇ!?あ、あぅ。それは……その……」 「冗談ですよ、冗談。そんな小学生みたいな事、気にしませんよね」 「……それはそれで寂しいわ」 少しぐらいは気にしてくれてもいいのにという気持ちもあるんだけど。 恋人関係がが終わった後、多少ぎくしゃくはしながらも、私と冴原君は普通というか元の先輩後輩ぐらいの関係には戻りつつあった。 時々、彼の方から私に話しかけてきたりする。 この前の放課後だって、わざわざ私に話をするために掃除場所まで来てくれたりしたし。媽富隆 Marvelon それ以外にも、彼はまめに私と会う時間をつくってくれたりして、それが私にとっては不思議と安心感にも似た感じを受けた。 「それじゃ、俺は授業あるんでこれで失礼します」 「ううん。それじゃ、またね」 「ええ。ジュース、ありがとうございました」 彼はそう言って待たせていた友人と合流して運動場の方へと小走りに消えた。 私の口から自然に『またね』と言葉が出るなんて。 また次があるんだ、そう思うとなんだか嬉しい。 一時はもう終わりだと思っていたから。 そう、私の中で私の知らないうちに冴原君への新たな気持ちが芽生えはじめていた。 ただ相手がユミだとするとどうすればいいか相談する相手もなく、私は私自身が導き出した考えで行動しなくてはいけないという事だ。 ……自分が間違っているかもしれない、それでも止めてくれる人はいない。 後押ししてくれる人がいない不安。 でも、それが前に進むという事ならば私は……今度こそ自分の意思で決めて行動する。 私はユミに呼び出されて放課後、最後まで教室に残っていた。 誰もいなくなった教室にしばらくしてからユミが姿を現した。 その表情は怒ってるようにも見える強い意志を持っている。 「……それで用事って何なの?」 「率直に聞くわ。最近、ずいぶんと玲人と仲良くしてるみたいじゃない?」 「それがどうかしたの?別に今さらじゃない」 彼と仲良くする事に関しては彼女が何かいう事ではない。 それは冴原君自身が望んでいることでもある。 「玲人が貴方と仲良くしてるのみてるのが嫌なの。何で?今さらというけれど、雪穂は玲人と別れたじゃない。普通は別れた相手とそう簡単に仲良くできないわ」 「それができるのが彼の魅力でもある。そう言ったのはユミじゃなかった?」 「時と場合と相手によるの。自分が何をしてるのか分かってる?」 「つまり、自分が恋人の時は不安になるからやめて欲しいってワケね」 まぁ、普通恋人ならば独占欲をもつものだし、ユミの気持ちだってわかる。 私もユミとか他の女の子が一緒にいると嫌だったから。 でも、私は……私は冴原君とは友人でいたい。 「私は友達として付き合っていきたいわ」 「やめて欲しいって言ってるの。私の恋人には近づかないで。今、あの子は凄く心が揺れているの。貴方に振られて私へ気持ちを切り替えようとしている。そんな時に中途半端にまた雪穂がいたら切り替えられないじゃない」 「ユミの言ってる事はわかるけれど、だからってここで関係を終わらせるのはできない。私は彼に対して恋はしてなかった。それは認める。けれど、彼の事は男の子としてじゃないけれど好きなの。いい友達になれるかもしれない、それでもダメなの?」 イツキと小鳥であった頃のように友達に戻りたい。 そう望んではいけないの? 私のひとつひとつの言葉に彼女は反応をしめして、 「……ダメよ。ダメなの。もう……やめて。貴方から彼に近づかないでくれたら、それで全てがうまく行くの。雪穂さえいなければ……」 「それどういう意味?」毓亭 「貴方が知る必要はないわ」 全てうまく行く、どういう意味があるんだろう。 ユミがここまで動揺して、私を怖れている理由。 私が傍にいるだけでもダメという本当のワケ、。 「とにかくもう玲人には近づかないで。いいわね?」 そう呟いた彼女の表情には寂しさのようなそんなものを感じ取った。 ユミの忠告は半ば無視して私はそれ以降も彼に近づいていた。 だって、私が傍にいる事がいけないなんていわれたら誰だって気になるし。 彼女は何かを隠している。 それも私と冴原君の間にある何かとても重要な事を隠している。 「普通、男と女の友達でもさ、それが恋人持ちだったら相手のこと考えたりするでしょ」 「そうね。それなら改めて貴方に許可をもらうわ」 「そ、そんなの許可できるワケないじゃない」 私はいつのまにか彼を男の子としてみていた。 冴原君と別れてから、私はイツキとしてではなく彼を彼として見て初めて気づいた。 私の心の中にいる冴原玲人と言う存在。 “イツキ”という存在と入れ替わるようにして私の心を満たしている。 人が恋をするという事は相手を強く意識することだと私は思う。 私は彼を振ってからも常に傍にいてくれた冴原君を意識している。 もう過去の想い人だっただけじゃない。 今、私の中で彼への想いが形作られようとしている。 「……貴方だって常識ぐらい分かるわよね?他人の恋人にちょっかい出すのがどういうことなのか。そんな最低な友人を持った覚えはないわ」 「そう言われると、もっとしたいって言いたくなる」 だからこそ、このまま終わらせたくない。 ……すごく我が侭な事を言ってるとは思う。 「いつから雪穂ってそんな意地悪な性格になったの」 「意地悪なんてそんな悪い言い方しなくてもいいじゃない。別に私は意地悪する気なんてないんだから。ただ、私は……」 私はもう1度だけこの自分の想いを見極めたい。 言うならば3度目の恋。妻之友 イツキに抱いてた私の想いを1度リセットして、冴原君として私は新たに想いを抱く。 自分勝手で、身勝手でそれを全て理解してる。 「……もうチャンスなんてあげないわよ?」 「そんなものいらない。貴方に与えられたチャンスならいらない。だから、私は私の力でチャンスを手に入れる。それが本当のチャンスってものだから」 「自分が何を言ってるのかわかっていて、私に宣言してるのね」 わかってるよ、それがユミを傷つける事だっていう事も。 ユミが諦めずに恋を成就させたのを知っていても。 でも、止められない、それが恋だから……。 「冴原君が好きなの。だから……貴方を傷つけても私は諦めたくない」 認める、認めてしまう。 今まで形ができていなかったあやふやだった想いが1つの形になっていく。 私は冴原君が好きなんだ、あの優しい笑顔に惹かれていた。 好きじゃなかったんだ、もうその言葉は彼に2度と言わない。 「……雪穂、変わったわね。昔の貴方ならそういう気持ちを持てなかったのに」 「ユミがきっかけをくれたんだ。私が変わるためのきっかけ。……冴原君と付き合いだして、初めて気づかされたの。私は我が侭な女なんだって」 「そう。ふふっ……そう言うことなら私は手加減しないよ?」 ユミは微笑して私の肩を何度か軽く叩く。 「貴方と男を取り合う日が来るなんて思ってもみなかったわ」 「嘘つき。ユミは……最初からこうなる事を予想していたでしょう?昔からそうだもの。ユミの行動には常に裏があるから」 「失礼だね。私はそんなに裏表がある生き方してないもん」 唇を尖らせて反論するユミの顔は笑っていた。 実際、今もそうなんだ。 口では私を責めておきながら、どこか楽しんでいるようにも見える。 お互いに嫌な雰囲気になっていないのがその証拠でもある。 「……雪穂、本当に玲人が好きなんだ」 「今さらだけど、そうみたい」 「それなら、その気持ちが本物かどうか見せてもらうわよ」 夏が始まろうとしていた。 この先にどういう結果が待ち受けているのか私は分からない。 それでも、今度こそ、私は彼の事を好きになる。 ユミに負けて後悔してもいい、ただ諦めるのだけは嫌なんだ。 私は今度こそ自分の想いを冴原君に伝えたいから。中絶薬RU486
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Posted by beggar318 | 20:52:43, Mar 22, 2013 | TrackBack:x | Comments:x |