プースケは,トトロの家で飼っているセキセイインコのオスだった。 プースケが,台風の日の朝死んだ。 朝,鳥かごを見に行ったら,落鳥していた。 急いで手にとる。 「あれ?まだ少し温かい。」 手のひらの上にかすかな心臓の鼓動が伝わってきた。 最後の力を振り絞っていたのだろう。 トトロは,少し水を飲ませてやった。 舌を動かして飲み込むのがわかった。 プースケには,今巣箱に5羽のヒナ鳥がいる。 プースケはオスにしては珍しく,巣箱に入って卵を温めたりつがいのメスにえさを運んできたよく働くマメな鳥だった。 毛がまだ生えないヒナ鳥にとっては,24時間おなかをすかせる。 巣箱の中からえさをねだる声が聞こえれば,真夜中でも飛び込んでいった。 これだけの子育ては,人間でもなかなかできないのではないかとも思った。 プースケは,鳥屋の店先で売られていた鳥。 つがいにしようと思ってトトロの家で買ってきた。 もともと店先のせまい雑居かごにいたプースケは,トトロの家の大きな鳥かごに入ってきて,さぞ驚いたに違いない。 でも,環境の変化というものはなかなか難しいもので,初めはなかなかペアリングが成功しなかった。 トトロが出張のある日,携帯のメールが鳴った。 トトロの家からだった。 交尾していたという知らせだった。 やがて,巣箱に入るようになり,メスは産卵に至った。 メスは,まだ若かったせいもあり,プースケは一緒になって卵を温めてきたのだ。 そして,初めてのヒナがかえった。 立て続けに5羽かえり,一気に5羽の親となったプースケ。 朝も,昼も,夜も,いつもよく働いた。 この頑張りに,トトロはいつも感心というより感動させられてきた。 命がけって,こういうことなんだね。 今まで何十羽もセキセイを見てきたが,こんなによく働くオスは初めてだった。 そして,プースケは死んだ。 大きくなったヒナ達を見たかっただろうに。 夢を果たせなかったプースケに,最後のごほうび。 ヒナたちの顔を見せてやった。 プースケの最後とは知らずに,ヒナたちはえさをねだった。 プースケは,こたえようとはしなかった。 いや,できなかった。 星になったプースケが,今晩から空で見守ることになるんだね。
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